重力変化に対する免疫システムの可塑性とその破綻:免疫記憶機構へのアプローチ - 公募研究 2016-2017

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研究課題名 重力変化に対する免疫システムの可塑性とその破綻:免疫記憶機構へのアプローチ
研究代表者
前川 洋一
  • 前川 洋一
    岐阜大学 大学院医学系研究科・教授
    Website
    http://
研究協力者
  • 森田 啓之
    岐阜大学 大学院医学系研究科・教授

目的

宇宙空間では極限ストレスにより免疫システムが影響を受ける。免疫システムへの重篤な影響は感染防御不全だけでなくアレルギーや自己免疫疾患、がんなど様々な免疫関連疾患に直結する。そのため免疫システムはストレスに対する動的平衡能を有し決定的な破綻を回避していると考えられるが、その全貌は未だ解明されていない。本研究では、重力変化という極限ストレスに晒された免疫システムの可塑性(動的平衡能)とその破綻について検証する。特に免疫記憶機構への影響を中心に解明することにより、来るべき「宇宙に生きる」時代への免疫・感染防御領域における対策策定の基盤を形成する。またこの研究ではストレスの免疫システムへの翻訳機構とその応答を解明し、免疫システムの新たな高次恒常性制御機構を見出す。この研究から得られる成果は免疫システム破綻の治療法や予防法の創出にもつながる。

これまでの研究概要

私たちはT細胞の機能や動態を研究対象の主軸に据えて免疫システムの解明に取り組んでいる。これまでに、CD4陽性T細胞の機能分化、CD8陽性T細胞の機能発動制御、また近年はCD4陽性メモリーT細胞の生存・維持機構について、Notchシグナルの重要性を明らかにした。

また森田博士の協力を得て、過重力環境における免疫応答の可塑性と破綻に関して検証を行っている。これまでに、過重力環境で応答が発動されたCD4陽性T細胞は対照群と比較してその表現型に差異があることを確認している。

本年度の研究計画

1. 重力ストレス環境下でのT細胞免疫応答に現れる変化の抽出のその意義の解明
これまでの研究で得られている過重力下でのCD4陽性T細胞応答について、その変化を詳細に抽出する。また、その変化が免疫システム全体に及ぼす影響についても検証する。

2. 重力変化により免疫記憶機構(メモリーT細胞と抗体親和性成熟)が受ける影響
免疫記憶機構の本態は抗原特異的メモリー細胞(メモリーTおよびメモリーB細胞)の長期生存と再活性化である。メモリーT細胞の動態や抗体親和性成熟に与える重力変化の影響を検証する。

3. 免疫記憶機構への影響による感染防御能(初感染、再感染、潜伏感染)の変化
免疫システムは微生物・病原体感染の脅威に対抗する高次生命機構である。各種感染実験系を用い、初感染および再感染、また潜伏感染において感染防御能の検証を行う。