メダカを用いた破骨 - 造骨連動における重力応答機構の解明 - 公募研究 2016-2017
研究課題名 | メダカを用いた破骨 - 造骨連動における重力応答機構の解明 |
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連携研究者 |
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目的
骨は常に代謝され、破骨細胞が古い骨を溶かし、骨芽細胞が新しい骨を作ることでバランスを保っている。その両者を制御する詳細なメカニズムはまだ明らかになっておらず、宇宙空間すなわち微小重力状態になると骨量が減少することから、重力は骨代謝の制御に関わる一つの重要な要因であると考えられている。重力によるメカニカルストレスが解除されるとなぜ骨が減るのか、この視点から研究することで新しい骨代謝の仕組みを解き明かすことが期待される。過去2回行われた宇宙実験によって、メダカはこれまで不可能であった重力変化に対するin-vivoでの破骨と造骨を観察できる優れたモデル動物であることが示された。その解析結果から、破骨細胞は活性化しており、ストレス応答として知られるGR(グルココルチコイド受容体)のシグナル伝達が微小重力環境で上昇していることを見出した。そこで、重力ストレスが細胞の遺伝子発現をどのようにして調節しているのかを明らかにし、その調節機構に関連した破骨細胞の性質を調べる。
これまでの研究概要
生体内における破骨細胞の動態を明らかにするため、破骨細胞で特異的に蛍光が発現するTRAP(酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ)promoter-GFPトランスジェニックメダカを開発し、それを基盤とした骨研究を行っている。
2012年の宇宙実験では、破骨と造骨を観察できるTRAP-GFP/osterix-DsRedダブルトランスジェニックメダカを国際宇宙ステーション内で2カ月間飼育した。解析の結果、メダカの咽頭歯骨という組織の骨密度が低下しており、破骨細胞が活性化していることが示され、GRに関与した遺伝子群で発現の上昇が認められた(Chatani et al. Sci Rep 2015)。さらに2014年の宇宙実験では、骨関連トランスジェニックメダカの稚魚を特殊なジェルに包埋することで、生きた状態で姿勢を固定させたまま国際宇宙ステーションまで運び、微小重力環境下における動物体内の細胞をライブイメージングした。この実験系の確立により、今後の新たな重力応答トランスジェニック動物の解析が可能になった。
本年度の研究計画
本年度は、以前にメダカを用いて行った宇宙実験で発現変動が生じた遺伝子群のうち、GRに着目して解析する。GRを介してシグナル伝達されると蛍光を発現するトランスジェニックメダカを作製し、地上で重力を変化させる加重力実験を行うことで生体内のGRシグナルがどのように変化するのかを解析する。その際、破骨細胞でGRシグナルに変化があるのかを評価する。さらに哺乳類の破骨細胞培養系を用いて、破骨細胞の成熟過程におけるGRシグナルの新たな機能を明らかにする。このように、地上実験で重力とGRの関係を調べ、将来の宇宙実験を目標とした準備を行う。