一般の皆様へ

古川 聡

研究領域名 宇宙からひも解く新たな生命制御機構の統合的理解
略称:宇宙に生きる

国立研究開発法人・宇宙航空研究開発機構(JAXA)
有人宇宙技術部門・主幹開発員   古川ふるかわ さとし

医師かつ宇宙飛行士である私は、5ヶ月半の宇宙滞在で極限的ストレスを経験しました。それは例えば無重力による筋肉の萎縮、逆立ちしたときのような頭に血が上った頭重感、閉鎖環境による体内リズムの不調、宇宙放射線被ばく、微生物リスク、等々。「これらは相乗的に作用するのでは?地上でも関連する問題があるのでは?」との問いから、統合的な連携研究が必要との強い認識に至りました。「宇宙で遭遇する生物学的リスク・ストレスの解明とそれらの回避・軽減を目指し、同時に現代の超高齢化・ストレス社会の克服につなげたい」と願い、新学術領域研究チームの結成を決意しました。

宇宙というとどこか遠い存在で実生活とは無関係とお考えの方が多いのではないでしょうか?しかし、上で述べたような宇宙で身体に起こる事象を詳しく調べれば、地上の研究だけでは気づかなかった微生物からヒトまで生命の持つ新たな秘密を知ることができるでしょう。それらの知見は将来火星などに向かう超長期宇宙滞在や、人類宇宙移住時に役立つとともに、現代の超高齢化・ストレス社会の克服にもつながり、地上の我々の生活もより豊かにしてくれることでしょう。

宇宙という切り口で多様な分野の研究者が協力・切磋琢磨して推進する本プロジェクトのスタート地点に立つことができた今、実り多き新領域とすべく、身を引き締めて邁進する所存です。