臓器間のDNA損傷耐用能の違いから迫る「宇宙放射線克服ストラテジーの基盤構築」- 公募研究 2018-2019
研究課題名 | 臓器間のDNA損傷耐用能の違いから迫る「宇宙放射線克服ストラテジーの基盤構築」 |
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研究代表者 |
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研究協力者 |
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宇宙環境を積極的に活用しようとする試みは、単に居住空間の拡大のみならず、宇宙科学という複合的学術領域から新たな知見を得、そしてそれを「健康・長寿社会の実現」に昇華させる極めて重要な意味を持つ。そして究極的には、宇宙科学の発展は「サステイナブルな世界(持続可能な世界」の構築」に繋がると期待される。本研究で申請者は、宇宙環境の利用で想定される諸問題の中から、宇宙放射線被曝を克服する礎を築くことを目指す。
これまでの研究を通じて我々は、DNA二重鎖切断部位を可視化できる遺伝子改変マウス53BP1M-EGFPを作成してきた。また、細胞の放射線抵抗性を誘導し得る新規遺伝子(IDH3、LY6e、UCHL1、PER2)を同定し、各遺伝子の臓器特異的コンディショナルノックアウト(cKO)マウスの作製を進めている。これらの成果を基盤に本研究では、(1)53BP1M-EGFPマウスに宇宙放射線を模した各種放射線を京大・放生研や量研機構・放医研で照射し、放射線に強い臓器と弱い臓器をin vitro、in vivo双方の実験を組み合わせて明らかにする。そして、「きぼう」利用フィジビリティスタディに対し、「当該マウスを用いて、宇宙放射線の生体影響を解析するプロジェクト」を申請する基盤を作る。また、(2)放射線抵抗性関連遺伝子のcKOマウスに放射線を全身照射し、遺伝子ノックアウトによって個体レベルの放射線感受性が低下する臓器・組織を絞り込む。もって、個体レベルの放射線抵抗性・感受性を予測するために、放射線感受性関連遺伝子の発現レベルを解析すべき臓器と遺伝子を同定する。本研究を通じて、「放射線に強いヒトを予測・選別する手法の確立」と、「放射線被曝から防護すべき臓器の同定」を達成し、その成果を宇宙開発、及び医療行為等で生じるDNA損傷から高感受性臓器を護る系に応用、もって健康長寿社会の実現に繋げる。