重力変化による極限ストレス下での免疫記憶の成立・維持・再活性化の制御とその破綻- 公募研究 2018-2019

  1. A01 小椋
  2. A01 高橋(秀)
  3. A01 高橋(智)
  4. A01 道上
  5. A01 檜井
  6. A01 湊元
  7. A01 二川
  8. A01 茶谷
  9. A01 川上
  10. A01 秋山
  11. A01 冨田
  1. A02 篠原
  2. A02 三枝
  3. A02 前川
  4. A02 安部
  5. A02 大神
  6. A02 河野
  7. A02 高野
  1. A03 鈴木
  2. A03 中村
  3. A03 原田
  4. A03 小林
  5. A03 宮本
  6. A03 舟山
  7. A03 柿沼
  1. B01 ラザルス
  2. B01 加藤
  3. B01 國枝
  4. B01 北宅
  5. B01 沢野
研究課題名 重力変化による極限ストレス下での免疫記憶の成立・維持・再活性化の制御とその破綻
研究代表者
前川 洋一
研究協力者
  • 森田 啓之
    岐阜大学 大学院医学系研究科・教授
  • 高島 康弘
    岐阜大学 応用生物科学部・准教授

目的

極限ストレスは免疫システムにも重篤な影響を及ぼす。免疫システムへの影響は易感染性や潜伏感染再活性化を引き起こすため、その対策が必要である。しかし、どの程度のストレスが不可逆的な免疫システムの変化を引き起こし、易感染性や潜伏感染再活性化につながるのかは明らかになっていない。また、宇宙空間では宇宙線暴露による遺伝子損傷や酸化ストレスによってがん化の亢進が予想される。免疫システムの機能低下はがん監視機構にも影響を与え、長期間の宇宙空間滞在ではがん発生率が上昇することも懸念される。そのため、重力の変化によって受ける免疫システムへの影響を定性かつ定量的に検証し知見を蓄積すること、その知見をもとに対策を講じることが長期間の宇宙空間滞在には必須である。本研究では、重力変化という極限ストレスに晒された免疫システムの動的平衡能と可塑性について特に免疫記憶機構への影響を中心に解明することを目的とする。またこの研究から、破綻した免疫システムを回復させる方策の創出にもつながると考える。

従来の成果

  1. 「重力変化により免疫記憶機構(メモリーT細胞と抗体親和性成熟)が受ける影響」:
    私たちはこれまでに、重力変化がメモリーCD4 T細胞サブセット形成に影響を及ぼすことを見出した。過重力によるメモリーT細胞サブセット形成への影響は前庭系破壊(VL)により解除解除されないことを確認した。
  2. 「免疫記憶機構への影響による感染防御能(初感染、再感染、潜伏感染)の変化」:
    病原体潜伏感染に対する過重力の影響を検証した。トキソプラズマ原虫のマウス感染では脳神経系や筋肉などに原虫が潜伏感染し、I型免疫応答が低下すると原虫が再活性化し脳炎等の重度の病害を引き起こす。トキソプラズマ原虫潜伏感染が成立しているマウスを加重力環境下で飼育したところ対照群と比較し脾臓細胞数が減少し、インターロイキン17A(IL-17A)産生が低下する傾向が認められた。この現象のなかで脾細胞数の減少はVLにより解除された。
  3. 「極限ストレスの免疫システムへの翻訳機構の分子基盤」:
    私たちは過重力環境で抗原感作されたマウスの所属リンパ節において遺伝子発現の網羅的解析を行い、IL-6遺伝子発現が過重力群で影響を受けることを見出した。

本年度の研究計画

  1. 過重力によるCD4 T細胞メモリーサブセットの変化によって、免疫記憶を中心とした免疫システムにどのような影響がもたらされるのかを明らかにする。また、重力ストレスがどのような機構を介してメモリーサブセット形成に影響を及ぼすのかについても解明する。
  2. 感染防御免疫に及ぼす重力ストレスの質と程度を明らかにし防御免疫が破綻する閾値を見極める。
  3. 1及び2で観察された免疫系への影響と遺伝子発現の変化の関連を明らかにする。